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【産業保健のいろは - 業界地図編 - 】 第4話 人材サービス業界



産業保健職は様々な業界で働く社員の心身の健康維持に取り組みます。自分が携わる企業の特徴を把握しておけば効果的な施策を行えるでしょう。就職/転職で産業保健に挑戦する方のため、さんぽむらでは全5回に渡って様々な業界/職種の特徴、陥りがちな健康課題を紹介します。第4話は人材サービス業界について解説します。



【講師】

株式会社iCARE

小澤 梨花


国家資格キャリアコンサルタント

新卒で大学受験予備校に入社し、個人・法人営業に従事、東証一部の転職エージェントにてキャリアアドバイザー職としての勤務を経て、iCAREに入社。



【目次】

1. 人材サービス業界とは?

2. 人材サービス業界特有の働き方や健康課題

2-1. 人材サービス業界における健康管理に対する考え方や歴史

2-2. どのような人が働いているか?働き方など

2-3. 人材サービス業界特有の健康課題



\ 動画で知りたい人はこちらから /


 


| 1. 人材サービス業界とは?


人材サービス業界は企業/顧客のニーズに応じて必要な人材を供給します。具体的には求める人材を必要期間に応じて派遣する「人材派遣」、企業の業務の一部を請け負う「業務請負」、即戦力となる人材を紹介・斡旋する「人材紹介」の3つです。


人材サービス業界は派遣・紹介する人材の職種も様々です。一般事務系/製造職系/専門職系と手広く紹介する場合もあれば、製造系の関連職種に特化して紹介する企業も存在します。

中小企業では「ITエンジニア専門」などと職種を絞って展開する場合もあります。


近年では多くの業界で人材不足が深刻化しているため、人材サービス業界は活性化しています。特に若年層の確保は各事業者間で熾烈を極める状況だと言えるでしょう。


厚生労働省のHPでも人材サービス業界について解説しているので、ご興味がある方はご確認ください。



| 2. 人材サービス業界特有の働き方や健康課題


さんぽむら:

業界地図 第4回では人材サービス業界を取り上げます。本日は産業医の紹介をはじめとした、様々な企業の人事と会話する機会が多い小澤梨花(おざわ りか)さんに来ていただきました。


小澤:

よろしくおねがいします。



2-1. 人材サービス業界における健康管理に対する考え方や歴史


さんぽむら:

本記事を読まれている産業保健職、産業医の皆様もおそらく何かしらの求人メディアに登録されているのではないでしょうか?まずは人材サービス業界で働かれている方々の健康管理状況はいかがでしょうか?


小澤:

比較的規模感が大きい企業も多いので「法令遵守」というところは守っていると思います。ただオフィスワークがメインになるので、あまり労災予防意識が高くないとは思います。


働いてる方は20〜30代の若い方が多い業界なので「腰が痛い…」といったフィジカル面より、リモートワークが増えてきていることもありメンタル面の不調が課題にあがることが多いように思います。



2-2. どのような人が働いているか?働き方など


さんぽむら:

男女比はいかがですか?


小澤:

女性社員も多くなってきていますので、女性が働きやすい会社作りをされている企業は多いと思います。エンジニアさんが多いSES(システム・エンジニアリング・サービス)の会社だと少し違うかもしれませんが。


さんぽむら:

続いてはどのような働き方か教えてください。


小澤:

何かモノを作っているわけではなく、営業力で勝負をしている会社が多いです。比率としては営業職が圧倒的に多いです。あとは人事や総務の方がいらっしゃったり。エンジニアさんが少しだけいらっしゃっる印象です。


企業によって多少の差はありますが、営業職が多く、年功序列というよりは実力主義。

目標をどれだけ達成するかが大事にされている業界ですね。


さんぽむら:

働く側からすると若いうちにチャンスがありますか?


小澤:

そうですね、結果を残せば上がっていけます。入社年次、年齢など関係なく目標達成して数字という結果を残せば上に行けるので、それがモチベーションになっているケースが多いですね。


ただ営業の目標管理が1〜2年とか年間単位の長いスパンではなくて、多くの会社が3ヶ月ごとの四半期です。せっかく頑張って目標達成しても3ヶ月後にリセットされてしまうので、モチベーションの維持が大変だったり、常に気が抜けない状態になりやすいです。


さんぽむら:

給与面はいかがでしょうか?


小澤:

もちろん企業にによって異なりますが基本給が高いというよりは、目標達成に応じたインセンディブと、残業代でお給料を上乗せしていくケースをよく見ます。逆に成績が不振ですと給与もそれだけ変動があるので、プレッシャーが大きいですね。


さんぽむら:

労働時間はいかがですか?


小澤:

夜遅くまで働きがちですね…。日中は働いて、求職者と仕事の連絡が取れるのは17時以降。そこからお話して色々処理をするとどうしても遅くなってしまいます。


さんぽむら:

構造的に仕事が後ろになりがちなのですね。


小澤:

そうですね。どれだけ効率を意識したとしても夜型になりがちです。特に人材紹介、派遣のスタッフの対応をしている企業ですとその傾向が強いです。

紹介したスタッフが急に連絡が取れなくなってしまっての連絡ですとか、夜中に業務する看護師さんを派遣している場合、トラブルがあると夜中に問い合わせが来ます。トラブルがあったときに早朝深夜問わず、社員の方の携帯電話に連絡がくる模様です。


場合によってはスタッフの方が欠勤された分、ご自身が現場に行って作業することも発生しているようなので、ON/OFFのメリハリがつけにくいというお悩みを持っていらっしゃる方もいます。


あとはSESの方ですと、客先常駐という特殊な働き方なので雇用されている企業とは別の出向先で働きます。そうなるとコミュニケーションがとりにくかったり孤独感を感じやすいです。



2-3. 人材サービス業界特有の健康課題


さんぽむら:

続いては業界特有の健康問題を聞かせてください。


小澤:

圧倒的にメンタル不調が課題にあがりやすいと思います。背景としては実績/実力主義で営業の目標を達成していくことがとても大事で、それをプレッシャーに感じてしまいます。


あとは構造的な問題もあります。実績を出せば社歴/年齢に関わらず出世していくのですが、あまりマネジメントに慣れていなかったり。そもそもマネジメントが向いていなかったり、部下の面倒を見きれなかったりでメンタル不調が起こりやすいのだと思います。


さんぽむら:

なるほど。そうなると日常的にコミュニケーションを持つ自らの部下の異変を察知し、相談や支援の対応を行うラインケアも一癖あるというか…


小澤:

そうなんです…。あとは1人暮らしをされている方が多く、夜型の生活なのでご飯もコンビニや外食ばかりになってしまったり。眠る時間が遅くなるので睡眠の面でも課題があります。


さんぽむら:

なるほど。メンタル不調だけでなく、慢性的に過重労働の傾向がありますか?


小澤:

そうですね。やはり若くて頑張れてしまうので。営業の数字もしっかり残したいという風になると、ついつい積極的に残業してしまいがちです。


さんぽむら:

専門職の方が関わるときにもその気持ちというか、背景が分かっているとお話がしやすい感じがしますね。SESの方の健康管理についても教えてください。


小澤:

企業様によっては、月に何回かは自社に出社をしていただいてミーティングを設けるですとか、従業員の方の様子を把握するために工夫しているケースもあるようですね。


さんぽむら:

なるほど。行ったきりじゃなくて、ときどき帰ってくる日を設けるのですね。


小澤:

これはあくまで傾向だとは思いますが、エンジニアさんは職人気質で一人での作業に集中をすることが多いので、自ら発信しにくい印象です。コミュニケーションをちょっと苦手にされている方も多い印象なので、抵抗なくコミュニケーションとれるように工夫していく必要があります。


さんぽむら:

今日はありがとうございました。



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